私たちと地球の自然治癒力

人間の体には、本来、病気にならないための自己防衛力や病気になった際に回復する力が備わっています。これが一般に自然治癒力と呼ばれているものです。

昔から、人々は養生と言って、食べ物に気をつけ、運動をし、無理をせず、自然のリズムにのっとった生活をし、自然治癒力に頼って健康を維持しようとしてきました。
 

■自らを復元してしまうパワー
昔は、現代に比べ病気の治癒率ははるかに低いものでした。それでも、自然の経過をたどり治ってしまう病気も多かったようです。これが自然治癒力です。正常な状態から外れても、自らを復元してしまう力。そんな素晴らしい力を、私たちの体はもともと備えています。

 

今日、私たちが一般に医学・医療というとき「近代西洋医学」を指しています。医師免許を持つのは近代西洋医学を修めて、国家試験に合格した人です。しかし、世界中の国や民族には、伝統医学が多数存在しています。

東洋医学の鍼灸では、はりや灸という簡単な道具で、生体を刺激し、生き物としての体が、本来内在させている生命の力を上手に発揮させ、病気にならないように、病気になったとしても早期に解決するようにと考え、実践してきました。

 

■ホリスティックな視点
日本でも明治以前は、中国から伝わった漢方や鍼灸が医療の主流でした。近代になって西洋医学を修めた者しか医師になることを認めない政策をとりました。

1970年代くらいから、人間生来の自然の治癒力を高めることを原点とした医学が注目されるようになりました。いわゆる西洋医学だけでなく、世界古来の伝統医学を治癒に加味し、トータルな視点から人間をみつめようとするものです。ホリスティック医学と呼ばれています。人間を丸ごと捉える医学です。

 

■四季の乱れ、都市のストレス
現代は、地球環境の変化により、一年の四季に乱れが生じ、異常な暑さ、寒さが訪れ、降水量などにも混乱が出ています。また先進国などの都市生活では、心理的なストレスも極めて高くなっています。

自然のリズムにのっとって生きようとしても、昔のようにはいかず、人々は健康を維持できない状態です。

樹木が紅葉せず、希少動物が絶滅するだけでなく、私たちの自然治癒力自体が弱ってきたのです。人間が長く培ってきた知恵を働かせ、自然治癒力を維持し高めなければなりません。

 

 

 

 

 
 
 
■地球環境の回復への道
自然治癒力は、人間が作ったものではありません。人為的なものでなく、その名の通り「自然」の一部としてもともと存在しているものです。

自然治癒力を活性化することは、自然を回復するのと同じです。自然治癒力が蘇るとき、個人も社会も、環境も回復できるのです。

私たちが体で自然に治癒を起こす力は、地球が太陽と一定の距離を維持したまま太陽の周囲を回る力や、水が高いところから低いところに流れていく力と同じです。産卵のために体が押しつぶされそうになりながら川を遡る鮭の力とも同じです。

躍動しながらもバランスと秩序と調和を維持し、無限な変化の中でも持続性と安定性を維持しようとする力は、1つの微粒子から宇宙全体まですべてのものを貫いています。

 

■治癒の力を、日々の生活の中に
自然治癒力を取り戻すことは、単純に肉体的に健康になることだけを意味するのではありません。自然で純粋な私たちの本質を回復することを意味します。それは、自身と地球にとって有益な<正しい選択>ができる感覚を取り戻すことでもあるのです。

今こそ、人間の持つ治癒のパワーを、日々の生活の中に生かしたいものです。