「バイオプラスチック」という選択 ~分解されるプラや紙製を選び、海洋汚染に歯止めを~

 

 

プラスチックはたいへん便利な素材として、私たちの日常にくまなく浸透しています。ストローやレジ袋、食品トレーなど、生活の隅から隅まで使われています。その一方で、分解されないプラスチックごみが、深刻な海洋汚染を引き起こしています。

 

■世界中を漂うプラごみ

プラスチックは、海に浮き、細かく砕け、でも絶対分解しない地球上初めての物質だといわれます。画期的な素材として、人類の文明を100年以上にわたって支えてきました。

その一方で、自然界では分解されないという特性により、ポリ袋やペットボトルなどのプラスチックごみ(プラごみ)が海洋で細かく砕け、世界中を漂っています。直径5ミリ以下のプラごみは「マイクロプラスチック(MP)」と呼ばれ、魚の体内からも見つかります。

 

■植物由来+分解される新型プラ

こうしたなか、「バイオプラスチック」という素材に注目が集まっています。バイオプラスチックとは、トウモロコシやサトウキビなどの植物を原料としている「バイオマス・プラスチック」と、微生物の働きで分子レベルまで分解されて自然に返る「生分解性プラスチック」のことです。

日本では、2018年6月に閣議決定された「第四次循環型社会形成推進基本計画」において、バイオプラスチックは、生物由来のプラスチック(バイオマス・プラスチック)と、生分解性プラスチックの総称であると初めて明記されました。そのうえで、国の取り組みとして従来型のプラスチックからの転換と、バイオプラスチックの実用化を進めると宣言しました。

 

■喫茶店やコンビニのストロー
最近では、私たちのふだんの生活の中にバイオプラスチックが目につくようになってきました。たとえば、タリーズコーヒーでは、2019年にバイオマス・プラスチック配合のストローが導入されました。コンビニでもセブンイレブンが、アイスコーヒーなどのストローを植物由来の素材や紙製に切り替えました。

とはいえ、バイオマス(生物由来)のプラスチックの中には、バイオポリエチレンのように分解しない種類(非分解性)のものもあります。非分解性だと、マイクロプラスチックの削減といった効果が得られません。「分解性」なのか「非分解性」なのか、それを見極めることが大事なポイントになります

 

■紙への転換
一方で、プラスチックでなく、紙製に切り替える動きも活発になっています。スターバックスは2020年以降ストローを紙製へと転換してきましたが、今年9月からは、フローズン状の飲み物「フラペチーノ」の一部で提供していた口径の太いストローも、順次、紙製に切り替えました。

すかいらーくグループは2022年1月から順次、各店舗の持ち帰り・宅配用のスプーンやフォークをバイオマス・プラスチックから木製に変える予定です。

 

■課題はコスト
バイオプラスチックには、大量生産されている石油由来のプラスチックに比べてコストが高いという課題があります。

十数年前、生分解性プラスチックの釣り糸が大手メーカーから市販されたことがありました。引っ掛かって切れた糸が水中に残ったり、捨てられた糸が水鳥の体に巻き付いて傷つけたりすることが問題となっていたからです。しかし、価格が高いことや、使用後によく洗わないと分解が進んで劣化するなど使い勝手が悪いことから、定着には至りませんでした。

 

■市民の意識がカギ
カギを握るのは市民の意識です。

富山県では、プラスチックトレーを削減するため、2021年2~3月、地元のスーパー3店舗でモデル事業を実施。バイオマス素材を配合したトレーや紙袋などで包装した商品を従来のプラスチックトレーと並べて販売し、売れ行きを調査しました。その結果、比較的高値の商品であれば、コストがかかる紙袋やバイオマス素材を配合したトレーの商品でも購入される傾向にあることが分かりました。

消費者の選択が変れば、企業の姿勢も変わります。「脱プラ」につながる商品を選ぶことは、足元から地球環境問題に関与することでもあります。