自然治癒力を高めて自分で健康管理

病気になって医者や薬に頼る前に、自らの治癒力を発揮して本来の健康な状態に戻ることが、最高の健康管理法です。

■私たちの宝物
私たちには自然治癒力が備わっています。自然治癒力とは、体や心の内部に備わっている自己修復の能力です。日常的に生まれてくるガン細胞の芽のような有害なものを退治したりするのは、自然治癒力のおかげです。

「人生100年時代」と言われるほど、日本人の平均寿命はのびていますが、健康にさまざまな不安を抱えながら生きている人も実に多いです。

自然治癒力は昔から人間の「宝物」でした。古代から伝わる東洋医学では、健康と病気の間に、もう一つの状態があると考えられており、未病と呼ばれていました。この未病の段階で、自然治癒力を整え、病気を防ぐことが大事だと説かれてきました。

現代人は便利なテクノロジーや医療に頼りすぎることで、自然治癒力が弱まってきていると指摘する専門家も少なくありません。

 

■体と心
自然治癒力には、「肉体」と「心理」という2つの面があります。

肉体的な自然治癒力は、病気に対する防御機構や、ケガなどの回復プロセスを指します。例えば、傷口が自然に閉じることや、感染症に対して抵抗力を持つことが挙げられます。

一方、心理的な自然治癒力は、ストレスや心の痛みに直面した際に、それを緩和しようとする作用を指します。人間の脳には、経験から学び、適応し、回復する力があります。悲しみや喪失に直面したときも、時間が経つにつれて心の傷は癒え、前向きな感情や希望を取り戻します。

体と心の自然治癒力はお互いに密接な関係があり、いつも補完しあっているとされます。

 

■生活習慣
では、自然治癒力を高めるには、どうすればいいのでしょうか?まず注目したいのが、生活習慣です。食事、適度な運動、十分な睡眠などは、自然治癒力を向上させるために重要な要素です。健康的な行動パターンを維持することで、体や心の回復能力を最大限に活用することができると言われています。

体の不具合を感じるようになったら、この一週間の生活習慣を振り返ってみるといいでしょう。運動不足や睡眠不足ではないのか、過食や飲み過ぎで胃腸を酷使したのではないのか、さまざまなストレスや喫煙などの生活習慣病の要因となるアンバランスな生活を送ってはいなかったのかについて、まず自己点検を行ってみましょう。

●運動
運動不足は、自然治癒力を下げる原因になります。運動が足りずに体が硬くなり、血流が悪くなると、体温が下がって免疫力がダウンしやすくなります。

風邪やインフルエンザなどのウイルスは体温が高いと死滅しやすくなるとされており、風邪のときに熱が上昇するのは、ウイルスを撃退しようとする免疫反応の一環です。運動で筋肉が強くなると代謝が活発になり、体内で熱を生みやすくなります。

筋肉は基礎代謝を支える一番重要な組織です。安静状態でも、筋肉からは多量の熱が作られています。適度な運動を続ければ、代謝アップや冷え対策などのさまざまなメリットが得られます。

また、運動には心理的なリフレッシュ効果もあります。感情のいらだち、焦り、不安などを消してくれます。適度な運動によってストレスホルモンの分泌が抑制されるといいます。運動によって多幸感をもたらす「快ホルモン」の分泌が増え、免疫活性も高まるという研究報告が相次いで出されています。

●呼吸
自然治癒力は、自律神経と深く関係しています。自律神経とは、人間の基本的な生命活動を無意識のうちに支える神経です。それには、ストレスを感じたときに優位になる「交感神経」と、リラックスのときに働く「副交感神経」がありますが、免疫機能を働かせるのは副交感神経の役目になります。

このため、強いストレスを感じる状態が続いて交感神経が優位になりすぎると、副交感神経の出番がなくなり、免疫力が低下しやすくなります。さらに、免疫システムの中枢である「白血球」の働きも悪くなり、さまざまな病気を起こしやすくなります。

呼吸は、自律神経の様々な働きの中で唯一、自分の意思でコントロールできるものだと言われています。深い呼吸はリラックス反応を促し、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制する効果があります。深い呼吸を行うことで、心拍数や血圧が下がり、リラックス状態に入ることができます。仕事での重圧や競争心から解放され、自分らしい輝きを取り戻すことができます。

また、酸素は免疫細胞の活性化に必要であり、深い呼吸によって酸素濃度が増加し、免疫系の機能が向上するとされます。

●トータルケア
自然治癒力を活性化するためには、ふだんからストレスと上手に付き合うことが大切です。「体」だけでなく、「心」「脳」までケアして、大切に扱ってあげる。そうすることで、体の細胞が活性化し、自然治癒力などのシステムを正常に働かせることができます。

東洋医学では、健康を「気」「血(けつ)」「水(すい)」のバランスでとらえます。この3つがバランスよく働いていれば「健康」だとされます。どれか一つの調子が悪いと、後に他の部分にも影響が出てきます。

「気」というのは元気、気分がいいというように、生体の目に見えないエネルギーといったものです。「血」は血液ですが、もっと概念的なことを意味します。「水」は唾液(だえき)、鼻汁など血液以外の体液のことです。

この3つのバランスを崩す要因の一つとして、ストレスが指摘されています。ストレスは、交感神経を高ぶらせて血管を収縮させます。「血」の働きの乱れは20代のときに多いといいます。「水」はむくみや汗などとして表れ、30代半ばに目立つといいます。放置すると40代になって眠りづらい、いらいら感を抱えることがあります。個人差はありますが、更年期の50歳前後で、それまでの不調が一斉に強く表れるようです。

いずれの場合においても、病気の根本となるのは結局一つです。体のどこかでエネルギーの流れが詰まってしまい、本来生命体が持っている自然治癒力を発揮できないでいるということに、その原因があります。

詰まっているところをほぐし、気血循環を円滑にするだけで、大体の症状は時間とともに回復に向かいます。遺伝をはじめとする幾つかの要因は、私たちの制御外のものですが、その他の要因は調節が可能です。

 

■社会、そして地球を治癒
自然治癒力は、人間の内部だけに作用するパワーではありません。脳教育では、自然治癒力の源はそれよりはるかに深いところに存在すると考えます。存在するすべてのものに持続性と安定性を与え、全体が調和とバランスを維持できるようにしてくれる力が、自然治癒力の源です。

自然治癒力の回復は、単純に肉体的により健康になることだけを意味するのではありません。自然で純粋な私たちの「本質」を回復することを意味します。これは、自分自身や社会、地球に有益な正しい選択ができる感覚と判断能力を取り戻すことです。

私たちが自然な方法で自分自身の健康を守れるようになれば、それだけ地球環境にかかるストレスも減ります。一人ひとりが自然治癒力を回復し、他の人々もそのような状態になるようサポートすれば、結果的には地球全体の自然治癒力が高まります。これは平和的で持続可能な世界を作るための、最も易しく強力で根源的な方法です。

最も根源的な意味での自然治癒力の回復は人間の人間らしさ、人間の真の本性を取り戻すことにあります。