環境問題は「危機感」から「行動」へ

熱波、豪雨などの異常気象が世界各地で相次いでいます。土砂崩れ、河川氾濫、大規模な山火事などの災害も増えています。これらは、地球温暖化が原因の一つと考えられています。私たちは、自分たちが受け継いだ地球をこれ以上悪化させることなく、将来の世代に引き渡せるのでしょうか。現在の危機的状況に気づくことは解決への第一歩ですが、事態は今や、気づいたというだけでは済まされません。個人であれ組織であれ、問題認識を行動(アクション)に移すときです。

 

■国連の報告書
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8月、地球温暖化に関する報告書を公表しました。1700年代半ばから1900年ごろにかけて起こった「産業革命」の前の世界平均として算出した1850~1900年の気温と比べ、2011~2020年は1.09度上昇した、と報告しました。同時に、「極端な気象」の増加も指摘。「10年に1回」くらい起こっていた異常レベルの高温の発生頻度が、「10年に2.8回」に増えたといいます。報告書は、これらの気候変動が人間の影響でもたらされたことは「疑う余地がない」と断言しました。

地球規模の気候変動により、日本に住む私たちの生活と命も頻繁に脅かされるようになりました。2018年夏、梅雨前線や台風の影響で西日本を中心に記録的な大雨が襲い、土砂災害と河川の氾濫が相次ぎました。2021年夏も、同じ地域に大量の雨を降らせる線状降水帯が発生し、九州に河川氾濫をもたらしました。

 

■現代文明がもたらした「明暗」
現代文明が人間にもたらした技術には、多かれ少なかれ必ず明暗両面が存在してきました。19世紀の化学者ノーベルは、自分が発明したダイナマイトが戦争の兵器として使われたことに苦悩していたといいます。20世紀以降の現代の科学技術の進歩はさらに速くなり、地球とのあつれきが激しくなっています。

私たち現代人は技術の発展の恩恵を大きく受けていますが、同時に、発達したがゆえの深刻な問題も提起されています。たとえば、優れた安定性が長所とされたプラスチックは、その長所が裏目に出て、海洋汚染などの問題を引き起こしました。生活は豊かになったものの、エネルギー消費量は増大し人口が急増。人間の生存活動そのものが地球環境に負荷を与えています。

 

■自分の体のように地球をケアする
人類の長年の活動により変わってしまった地球環境を元に戻していくのは、簡単ではありません。政府や企業だけでなく、一人ひとりの市民が自分のこととして考え、行動していくしかありません。

自分の健康を医者や薬、または保険が解決してくれるという考えを捨て、体と心をケアするライフスタイルを実践する必要があるのと同じように、私たち一人ひとりが地球をケアすべきです。環境政策の立案者が地球の健康問題を解決するだろうという考えを捨てなければなりません。私たち人間が地球を病ませたのであり、それを正すべきなのも私たちだということを肝に銘じましょう。

あるアメリカ先住民の長は、次のような言葉を残したとされます。
「地球は人間のものではない。人間が地球のものなのである。地球上のすべての物は一つの家族を結ぶ血のように結ばれており、地球に何か問題が起これば、全ての生き物に問題が起こる」

 

■国や宗教よりも、まず地球
国や宗教、理念がなくても私たちは生きられます。しかし、環境が病み、息ができず水を飲めず食べ物も食べられなければ、私たちは存在できません。自然が病めば人間も病みます。自然のエネルギーバランスが崩れて水と空気が循環できないと、人間のエネルギーバランスも維持できません。

日本の民間調査会社が国内の20~69歳の男女を対象に環境問題に関する危機意識を聞いたところ「強い危機感を感じている」「危機感を感じている」と答えた人は計73%に達しました。こうした「危機感」が、具体的な行動へと結びつくかどうか。そして、その行動が習慣・文化として定着するかどうかが、地球の将来を左右します。できることからアクションしていきましょう。