人生120年時代を元気に過ごすためには食事も大事です。食べたものがあなたになります。
■長寿村が教えてくれること
戦後日本を代表する長寿村として知られてきた山梨県上野原市の棡原(ゆずりはら)地区。専門家による様々な研究の結果、この地域の長寿の秘訣の一つは「食生活」にあったことが分かっています。
棡原地区では戦後も麦、雑穀、イモ類、豆類、野菜、山菜を中心とした食生活が続けられてきました。交通が不便なこともあり、自給自足のような生活スタイルが保たれました。自分たちでつくった麦などの雑穀、芋類、豆類、野菜を食べていたのです。
また、地形的に米のとれない地域だったため、白米のかわりに、アワ、キビ、ヒエ、モロコシの摂取が多かったといいます。これらの雑穀に加えて、ねばりのあるサトイモ、コンニャクなどのイモ類をみそ汁に入れて飲む習慣がありました。これらの食事は食物繊維やミネラルがたっぷりでした。
■食事の欧米化
戦後、日本人の食卓は欧米化が進みました。欧米化された食生活は、肉類が中心で油脂を多く使った料理法が多くなりがちです。このため、動物性たんぱく質や脂肪をとり過ぎる人が増えました。
欧米諸国に多い心臓疾患や糖尿病、大腸ガンなどが増えたのは、食生活の変化と深い関係があると言われています。
伝統的な日本食は欧米の食事に比べて、豆腐など植物性たんぱく質を含んだ食材が多く使われます。動物性たんぱく質でも魚が中心であるなど、コレステロールが肉類に比べ少なく消化吸収もよいものです。
■5大栄養素をバランス良く
私たちが食べ物や飲み物から摂取する栄養素にはいろいろな種類がありますが、体のエネルギーになる炭水化物、脂質、たんぱく質を「3大栄養素」といいます。これにミネラルとビタミンを加えた5種類の栄養素(5大栄養素)が重要視されてきました。
これらの栄養成分は体内でさまざまに処理されて変化し、いろいろな役割を果たしますが、それぞれの栄養素が別々に働くのではなく、お互いに影響し合って作用し合いながら働いています。
例えば、体内で糖質を活かすためにはビタミンB群やCのサポートが必須です。一方、ビタミンAを吸収するには脂質の助けがいります。
「食生活はバランスが大事」と言われるのは、これらの栄養素が連携しあいながらトータルで生命活動を支えているからです。
■不足がちな食物繊維
これらの栄養素に加えて、食物繊維や水などのように「栄養素ではないが、体内で重要な役割を果たす成分」も摂取することの大切さが指摘されています。
とりわけ食物繊維については、腸内環境を整えるうえでカギを握るとして改めて注目が集まっています。
もともと日本の伝統的な食事は食物繊維が豊富でしたが、欧米化により摂取が減りました。日本人の食物繊維の1日平均摂取量は14グラムで、厚生労働省などが摂取の目標としている約20グラムの7割ほどにとどまっています。1950年ごろには平均23グラム摂取していたとされ、当時に比べ今は約4割減だということです。
■「食べ方」もポイント
健康寿命をのばすためには、何を食べるかに加えて、「どう食べるか」も大事です。
私たちの体には、神経系や内分泌系の働きによる生体リズム・生活リズムが刻まれています。健康的な食生活では、このリズムに合わせた朝、昼、夕3食の規則的な食習慣が大切になります。
食事時間が乱れたり、間食・夜食などが続くと、胃の負担を大きくしたり、生体リズムの乱れを招くだけでなく、肥満の原因ともなります。
ダイエットのために欠食する、という人もいますが、同じ量の食事でも1日に食べる回数が少ないほど太りやすくなると言われています。
ゆっくりよく噛んで食べることもポイントです。ご飯をゆっくり噛んでいると、ほんのりとした甘みを感じます。これは唾液に含まれる消化酵素アミラーゼの働きで、ご飯のでんぷんが分解されて麦芽糖ができるためです。
このように食事をゆっくりよく噛んで食べると、消化吸収をよくし食物を十分に味わうことができ、また適量で満腹感が得られるので食べ過ぎを防ぐことができます。
毎日の食事で健康体質を!