江戸時代に描かれた景観画「江戸一目図屏風」。
そこに見る江戸の町は、緑豊かで水もたくさんあります。原野を緑の町に作り変えていった江戸人の知恵が映し出されています。江戸は自然と調和しながら発展しました。いま私たちがめでる桜の木にも、江戸時代に植えられたものがたくさんあります。
江戸時代のころは、木のリサイクルが徹底されていました。美しい紙はすき返して再利用する。お習字の紙も、真っ黒になるまで使い込む。長屋暮らしで言うと、12軒の長屋から出るゴミが、今の一軒分のゴミ箱一つで間に合うくらいだったとも言われています。
自然との共生
日本では昔から、自然との「共生」の精神が大事にされてきました。とくに「木」や「森」に対する敬意は相当のものでした。例えば、げた、船、家など生活用品の多くを木で作ってきました。まきなどのエネルギー源、文化を支えてきた和紙や墨も木で作ったものです。
「木は命あるもの」と考えられていました。木曽の山の歌には、木を「切り殺す」と歌ったものが伝えられていたそうです。木を殺さなければ生きていけない、という心の痛みを自覚したうえで、そのおかげで暮らしの文化が成り立っている、という葛藤や感謝を抱いていたのです。樹木の伐採は、豚や牛と同じように、木を「殺生」することになるという意識がありました。
もともと森という場所は、いくつもの村の人たちが共同でたきぎを拾ったりする、みんなの財産でした。それが、近代化に伴って、次第に人の暮らしが森から離れてきました。
森は共生の思想そのものです。森には小動物もいれば花も咲きます。異なる命が集まっている所です。森の共生システムの中に社会秩序の原点が見えます。
人間の体の中にも微生物がたくさんいて、折り合いをつけて生きています。現代人はともすれば微生物を追い出し、無菌室の中で暮らした方が心地よいと考えがちです。でも、実はそれは息苦しい世界です。
壊れゆく地球
いま世界では木や森が失われ、砂漠化が急速に進んでいます。国連環境計画(UNEP)によると、地球の陸地の約4分の1に相当する36億ヘクタールが砂漠化の影響を受けているそうです。日本の国土面積の約95倍に相当する面積です。
さらに、人間の便利さのためにできたプラスチックやゴミが天と地と海を覆っています。数十年後には、海は魚よりプラスチックのほうが多くなるといいます。このまま行けば、数年以内に 100 万種の生物が地球からなくなるそうです。
砂漠化、海洋汚染、温暖化などの環境問題を改善するためには、昔の人が持っていたような、自然に対する感謝の心を取り戻さなければなりません。
地球市民が選択すべきこと
現代の人間には、あたかも地球を人間の所有物にしているような思い上がりがあるのではないでしょうか。本当は、逆に私たちの方が地球に生かされているのです。私たちの暮らしが地球に害を与えるのであれば、私たちの方が排除されなければならない立場にいます。
私たちがとるべき選択は「共生」です。個人の利便性よりも共生を最優先にしましょう。地球上に他と完全に隔たって存在している生命はありません。すべてはつながっています。すべての生命体、そして地球が私とつながっていると感じられる人、大切に思える人が地球市民です。そんな思いを太陽のように明るく輝かせ、健康、幸せ、平和を自ら創造しましょう。