使われなくなったモノや素材を使って、より価値の高い製品を生み出す動きが盛んになっています。「アップサイクル」と呼ばれ、単に再生利用(リサイクル)するだけでなく、新たな価値を加えていく創造的なエコ活動の一つです。
■服やアクセサリー
アップサイクルが進んでいるのが、衣料・ファッションの分野です。古い服や生地をリメークして、新しい服を作る個人や会社が増えています。再生生地を組み合わせたドレスや、貝殻や流木で作ったアクセサリーも人気です。おしゃれをしながら社会貢献もできると、市民の共感を集めているようです。
ファッション業界は大量生産・大量消費のファッションが環境に過剰な負荷をかけると非難されてきました。安価な衣類を気軽に買って楽しむ「ファスト・ファッション」が21世紀に急速に普及したことも、消費に拍車をかけました。
中小企業基盤整備機構の推計(2009年)によると、国内の衣料品の供給量は約110万トン。そのうちリサイクルされたのは約1割。衣服には異素材が数多く使われており、仕分けが難しいことなどが理由とされてきました。
■工夫や感性で付加価値を生み出す
ファスト・ファッションの見直しから生まれた新しい潮流が、環境への影響を踏まえて持続可能性を重視する「サステイナブル・ファッション」です。古着を再生循環させるリサイクルにとどまらず、デザインなどの力でより価値のあるものを作り出したいという多くの人たちの意欲も、この流れを後押ししました。
服のリメークは、材料は安価な一方、ふぞろいだったり、再利用する際の手間などがかかったりします。一人一人の工夫や感性でいかに付加価値を生み出せるかがカギになります。
消費者サイドとしては、環境への貢献だけでなく、素材の質感や形状を生かした「一点もの」のデザインの価値を見直すこともポイントになります。
■保存袋をおしゃれなバッグに
アップサイクルは欧米で生まれ、日本では10年ほど前に始まりました。背景には「私たちは生産しすぎ、消費しすぎ」という反省に加えて、リサイクルをより創造的に楽しみたいという意識の高まりもあります。
服だけでなく様々な分野に広がっており、たとえば食品用の保存袋を、おしゃれなバッグに変える人も増えています。
空き家になった古民家をリノベーションして宿泊施設へと再生させるのも、アップサイクルの一つです。空き家から宿泊施設へ価値がアップするからです。
■「6R」を実践しよう
日本政府は2000年に「循環型社会形成推進基本法」を公布しました。2009年には「アジア3R推進フォーラム」を設立され、リデュース(減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(再利用)の3Rが推進されるようになりました。
近年、この3つでは取り組みが不十分だとして、欧米でさらに進められている「リフューズ(断る)」「リペア(修理して使う)」「リパーパス(形を変えて使う)」を加えた6Rが推奨されています。このうち、リパーパスがアップサイクルに該当します。
リパーパス(アップサイクル)は産業界・商業界にも急速に広がっており、空き缶のプルタブを利用して作られたバッグなどが販売され、ペットボトルやプラスチックごみを原材料とする日用品・装飾品も生まれてきています。不要になった学生服を回収、サイズを直して販売、家計にも優しい「制服のリユースショップ」も注目されています。
私たち市民も、こうした動きを意識しながら消費者として行動したいところです。
■リカバー(清掃活動)も
また、6Rのうちの「リフューズ(断る)」は、消費者側がコンビニなどで食料品を買うときにスプーンやフォークを断ったり、過剰な包装をやめてもらったりして、廃プラなどを減らす取り組みです。
6Rに加えて、「リカバー(清掃活動)」も大切です。世界の海に流れ込むプラスチックごみを減らすためにも、リカバーを含む「7R」を実践したいですね。