最近よく耳にする「サステイナブル」。本来は、「維持できる」「耐えうる」「持ちこたえられる」を意味する英語の形容詞です。近年は、人類や地球にとって「持続可能な」ことを指す標語として浸透しています。大量生産、大量消費、大量廃棄というスタイルを見直し、地球環境と調和した生活を送るためのキーワードになっています。
■「乱開発」や「大量消費」の反対語
サステイナブルの考えは、20世紀の乱開発や経済至上主義の反省から生まれました。世界の知識人らが参加する「ローマ・クラブ」が1972年、このままでは地球が危機に陥ると警鐘を鳴らしたことが、起点の一つになったとされます。
1992年にブラジルで開かれた国連の「地球サミット」では、世界各国の共通理念として「持続可能(サステイナブル)な開発」が打ち出されました。それ以降、経済、政治、文化、教育などあらゆる分野で意識されるようになってきました。
しかし、社会の仕組みや人間の行動を抜本的に変えるには至っておらず、温暖化などの危機はさらに深まっています。
■「もったいない」や里山文化
サステイナブルという発想自体は、昔から私たちの習慣の中に存在していました。日本では、モノや食べ物を粗末にせず、自然と良い関係を保つという知恵が育てられてきました。「もったいない」という言葉も、そんな日本人の姿勢を示しています。
里山も日本に根付いてきたサステイナブル活動の一つです。里山とは、農山村の背後にある丘陵地。多くは、クヌギ、コナラなどを中心とする雑木林になっており、たきぎや炭、たい肥、家畜の飼料、建築材、生活具用材を供給する農用林として利用されてきました。
人々は定期的に下草刈りや野焼きをし、里山を利用可能な状態に保ち続ける努力を繰り返してきました。それが、野生生物の保全に重要な役割を果たすことにもなったとされます。
■打ち水、風鈴、すだれ
また、日本には、夏の暑さをしのぐ打ち水や、風鈴で涼を感じる文化があります。これらは、今こそエコな視点から見直したい風習です。簾(すだれ)も同様です。
こうしたサステイナブル的な文化は、日本だけでなく海外にも様々な形で存在しています。しかし、私たち現代人は「利便性」「効率性」を追い求めるあまり、こうした伝統を忘れがちです。
■人間関係や商売も
また日本では、人間関係や商売においても、短期的な考えや行動に走ることは、長い目でみたら賢くない、と説かれてきました。持続的な関係を持つことによって、信用を少しずつ積み上げていく。短期的には自分にとって損になるようなことでも、相手のためになることを辛抱強く続ける。それによって、最終的には大きなリターンが得られる――。
そうした長期的な視野は、今後のビジネスでもますます大事になるでしょう。そして私たちは、一人の消費者としても、価格や便利さだけにとらわれず、より長い目でサステイナブルな商品やサービスを選ぶことが求められています。
地球資源や環境をこのまま使い放題にしていると、次世代の子どもたちや孫たちの時代の地球はどんな状態になっているでしょうか。今こそ「もったいない」を実践すべきときです。