国際脳教育総合大学院大学のソ・ホチャン教授によると、人間は、自分たちがより快適に暮らせるように、絶えず環境を変化させてきました。周囲の環境に適応することによって生存する他の生物とは違い、自分の望む方向に環境を開発し、変化させ、消費してきたのです。その結果、地球では、水、空気、土壌の汚染、生態系のバランスの崩れ、地球温暖化といった現象が起こるようになりました。
人体には、体温や血圧などを一定に保ち、健康を維持する「恒常性」という働きがあります。同じように、地球にも、循環システムや食物連鎖を通して、自然を健全な状態に保とうとする機能があります。
地球の環境破壊は、このような自然の循環を妨げようとする人間の干渉から始まります。急激な人口増加、資源の過剰使用、大気汚染、廃棄物の発生によって、自然の秩序に基づいて保たれていたシステムが崩れるのです。
ソ・ホチャン教授は「生態系破壊の根本的な原因は、生命としての自然の価値を無視する人間中心主義にある。自然は人間が征服する対象ではない。自然に存在しているすべての生物は、生存・繁栄の権利をもっており、自然は自らをヒーリングする能力を持っている」と指摘します。そのうえで、「人間が自然より上に位置し、自然は人間が『開発・管理』するものだとする考え方は、環境だけでなく人間そのものの破壊も招く」と話します。
人間が引き起こした環境問題の行方を決めるのは、人間自身です。人間が環境に順応するか、それとも従来のように環境を自分たちに順応させようとするのか。まさに私たち一人一人の生き方が問われます。
これまでの環境問題は、科学技術だけで解決しようとしていました。しかし、ソ・ホチャン教授は「生態系の危機の原因は、科学技術にあるのではなく、人間そのものの人間性を発揮できないことにある」と言います。人間も地球という共同体の一員であり、だれもが本心ではそうあり続けていと願っているはず。「人間にもとより内在している人間性を目覚めさせることが、環境問題の解決の糸口になる」(ソ・ホチャン教授)のです。