【地球アレコレ19】 タイ1

 

日本が多く関わりを持つ国の一つ、タイ。
経済やビジネス的な意味でも、また観光や食文化の意味でも。
ところでタイは、タイ族から来る国名です。日本であれば、大和族の国で大和国だ、という感じでしょう。けれど、タイにも日本と同じく他の民族もいますので、少しばかり強引ではあります。そこで、かつての国名『シャム』(またはサイアム)を使った地名や建物名が、今でもあちこちに残されているだけでなく、新たに名付けられてもいます。首都バンコックの目抜き通りはサイアムスクエア、日刊新聞サイアムラット、などなど。

ところでタイには、プーケットなどの国際的なビーチリゾートがいくつかあり、観光で訪れる人々は日本より3倍ほど多くいます。最近の政情不安で観光客数は減少傾向だそうですが、それでも年間1,500万人を超える人々がやってくる、観光大国だと言えます。

タイを訪れる人々、特に欧州や北米からの観光客は、割と共通して食事が美味しいと言います。香りの鮮烈な熱帯のハーブやフルーツを使った料理は、口から鼻へといろいろな香草の香りが溢れていく、熱帯によく合うものが多くあります。カーと呼ばれるタイ生姜、レモングラスやこぶみかんの葉(バイマックルー)、その他多くの強く鮮やかな香りがスープや炒め物に混じり合い、ムシムシとする南国での絶妙な清涼剤となって、実際に体内の熱を散らしてくれます。身土不二、その場所その場所で、それぞれ気候に合う大地の恵みがあり、それぞれの風土に合わせた料理法が文化として生み出され、また人間の方もその食べ物に合わせた体型や体質になっていく、その営みは本当に見事なものです。

そうした自然と人との関係の見事さを、ただ感動し感心して驚いていればいいかと思うのですが、そこに主義主張を伴った思想が根を下ろし、戒律のような不文律をつくっていきます。これはこうしなければならぬ、この働きは神のおかげだと思わねばならぬ、男女はカクカクシカジカでなければならぬ、ぬ、ぬ、ぬ・・・。
よくもまあ、というくらい窮屈な状態を形成し、そのなかで羊のようにおとなしく蟻のようにせっせと勤労に勤しむべし、という空気を世界中に広げることに成功してきています。おかげで世界的に自然界の驚異や人間の英知を忘れがちな世の中になってきています。だからこそ、そんなことを思い出させる映像や文章に改めて感動したりします・・・が、それで不自由な今の状態を自覚するか、というと、どうでしょうか。

ただし、もしそうした戒律を、自ら望んで取り込んでいくのなら、それは逆に、戒律の定める窮屈な世の中から抜け出て心の自由を取り戻すことに役立ってきます。戒律自体は世の中を変えようとするよりもむしろ、世の中の主義的な仕組み・宗教的な仕組みを変えないようにする傾向があるかもしれませんが、イヤイヤそれに従っているのではなく、積極的にその中に飛び込んで本気で戒律に従ってみようとすれば、違う意識が芽生えてくるようです。
生活の安定よりも戒律、飲食その他様々な欲望よりも戒律、人や財産を思いのまま支配したいことよりも戒律・・・、そうなると翻って、普通の生活の中で安定のため、欲望のためにいかに自分が振り回され、葛藤しているかに気付くでしょう。感情のコントロールもできず、楽な意識を保つこともできず、つまり自然界の美しさや自分自身の素晴らしさも分からずにいる状態に気付いて、ようやく本当の自由、心の自由さを得ようとしはじめます。すると今度は、戒律に感謝するようになり、その日常が至極普通のことになっていくでしょう。
(Change提唱者 一指 李承憲氏も、生活化が大事だとしばしば言います)

タイは国民の約90%が仏教、いわゆる上座部仏教徒です。日本は特異な宗教形態を持っていますが、タイの仏教は他の大きな組織宗教と同じく生活のなかに溶け込んでおり、ブッダとそれに仕える者(僧侶)たちは敬愛と祈りの対象となっています。溶け込んでいるからこそ日常的に目に触れることも多く、寺院のドアを開け放して高僧の説法会が行われている中に大きなカメラを抱えた旅行者が入っていっても、文字通りといっていいくらい、誰も気にしていません。子供でさえ。
上座部仏教は227の戒律があり、僧侶はそれを護って生活しています。(もちろんハチャメチャな僧侶がいるのはどこの国も同様ですが) 南国の開放性のおかげで、楽な意識を保って自らをある程度コントロールできている、強いオーラを持った僧侶を見ることも容易です。

タイの気候にピッタリ合った美味しい伝統的な料理は、タイを訪れる魅力の一つでもありますが、修行を積んで心が磨かれた人を、開放的な寺院で自然に見ることが出来るのもまた、ユニークな魅力です。
そうそう、開放的な寺院、開放的な人々、もう一つ、開放的(?)な仏像 ~寝そべっている仏像(寝釈迦像)~ の、のんびりした表情もまた、厳かさに慣れた東アジアの人々の目を楽しませるでしょう。

 

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