【地球アレコレ16】 ベトナム6

ベトナム語は、中国語などと同じく声調があります。

声のトーンで意味が変わる声調は、ただでさえ音節の少なさでは世界に稀な部類の日本語使いにとって、なかなか厄介です。例えて言うなら、『あー』という音節であったとしても跳ね上がったり沈んだり、あぁ~あ↑、となったりすることで、まったく違う言葉になります。中国語では四声と呼ばれる4つの声調ですが、ベトナムでは6つの声調です。とても簡単な単語すら、ベトナム人には何度もダメ出しされてしまうほど。

そんなベトナム語、雑踏のなかサラウンドで聞くと、なんだか音楽を聴いているかのような不思議な感覚を覚えます。抑揚の少ない日本語に慣れた耳からすると、聞き取れていない音もたくさんあるのでしょう。

とはいえ、前回ちょこっと触れましたが、中国の影響を多大に受けてきた国でもあります。つまり漢語(漢越語)がたくさんあるということで、漢字にしてみると目から鱗がポロポロすることも多くあります。旅先でよく使う単語ナンバーワン「ありがとう」は、ベトナム語で「カムオン」、これは恩を感じる~ 感恩で、また円だのドルだのの通貨単位であるドンは、銅から来ているそうです。ちなみに米国はヌオック(クオック)ミー、国+美で、つまり美国ですが、これは中国語からきています。韓国語でもミーグックで、漢字で書けば同じですね。(日本も漢語の影響の大きい国ですが、国名の漢字は中国語とだいぶ違うようです)

さて、サラウンドでお喋りを聞く機会といえば、公共の地上交通機関です。しかも、出発後30分から1時間まで。その後はだいたいどこの国でも、不思議と静かになっていきます。ベトナムでは大声で喋る人はあまり多くありませんが、決して静かというわけでもありません。ある意味では、超のつくマイペースです。最もこれは、国際的にみれば日本が超のつく全体ペースというか、周囲に迷惑をかけないことを叩きこまれている国ですので、基本的にはどの国でもマイペースぶりを観ることでしょう。

ベトナムの地方都市間を走る長距離バスはロシア製のバスが多く、少し小ぶりです。でも馬力はあって、車内すし詰め状態+天井にも大量の荷物や家畜というカオスな状態でもバンバンよく走ります。ときどきマフラーが落ちたり、支柱が折れたりするけど気にしない~、ちょこっと直して、ブロロロー、あ、また故障だ、ほら乗客の皆さんも分かる人は手伝って。お、エンジンかかった、出発~ブロロロ~、ん、またか、ええっと、こりゃどうにもならないから次のバスに連絡して代わりの部品持ってきてもらう、というわけで3時間くらい待機ね~♪

車内の会話(想像)

おしっこして来るからどいて… 何か食べる?… タバコ持ってるか?… ちょっと隣の方、水くださいな… コケッコッコッコ~(天井の鶏)…

何かあっても、急に止まっても、運転手や車掌との会話はほとんどありません。とても逞しいというか、焦ってないというか。そして寝起きの人たちも加わって、あちこちの家族や初対面同士での会話になっていきます。サラウンド音楽大会です。基本的にお金のない人たちがバスに乗っているわけで(お金があれば自家用車)、埃や油ヨゴレを気にすることもなく、音楽も聴けて、薄汚い旅人にとっては天国のような、でも超蒸し暑い車内(エアコンもちろんなし)です。

こんな人と人の距離が近い状態では、さぞかしストレスあるのでは、ということもなく、近くの人が知り合いだろうと他人だろうと、疲れたら肩を貸したり借りたり、挙動不審な外国人を気にすることもなく、「あんたの荷物、もうちょっとホレ、こっち」(想像、こちらが分からなかろうと何か喋っている)で、人の荷物を枕にしてエンジンルーム上で寝たり。

~状況がそうなら、それに合わせるだけ、苦手もヘッタクレもない、だから何?

同じ姿勢を続けていてお尻が痛い? へえ、そんなこともあるんだな…。

まるで長い修行を積んできた人のように、クッションのほとんどない椅子の上で平然と姿勢を変えず座り続ける猛者たち。普通の人たち。

結局、このバスが目的地に到着したのは24時間後。さすがに少し疲れの見える乗客たちと、運転手。とはいえ、みんな普通に動いて普通にバスからそれぞれの場所へ散っていきます。ストレスが少ないことがどれほど人をタフにさせるかしみじみ感じながら、ヨロヨロ歩くナーバスな旅行者は、何か不思議な感動が。よくぞ到着したなあ~、と。

Changeを示唆させることは、いたるところにあります。実際にエネルギーをChangeするために、僅かな時間を自分に投資してトレーニングすればいいだけです。

 

 

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