免疫力と花粉症 体のバランスを整えて健康力アップへ

免疫は、ウイルスや細菌などの異物(抗原)が侵入してきた時に、体自身が防衛隊(抗体)をつくって、これを排除しようとする大切なシステムです。

一方、このシステムが暴走して不快な症状を起こすのが、花粉症などのアレルギーです。

人間の体にはもともと、不思議な力が備わっています。怖い病気や凶悪な病原体から生命と健康を守ってくれる免疫という防衛の営みです。

今から数百万年前に地球に現れた人類は、何度も疫病、難病にさらされました。中世のヨーロッパを襲い黒死病と呼ばれたペストは、ヨーロッパの人命の3分の1を奪ったとも言われています。しかし、過去に遭遇した危険な敵の顔をきっちり覚え、次の襲撃に備える「免疫」という能力のおかげで、ペストのような危機が起きても、人類は絶滅しませんでした。

とはいえ、免疫はときに私たちに牙をむきます。免疫反応が過剰に作用し、アレルギーを引き起こすのです。花粉症アトピー性皮膚炎ぜんそくは、免疫が暴走している状態です。外敵から体を守るはずの免疫反応によって、体がダメージを受けてしまうのです。

免疫システムが異物に敏感に反応するからといって、それが「免疫力が高い」ことを意味するわけではありません。アレルギーは免疫のバランスが崩れ、無害であるはずの花粉などを敵と認識し、反応している不正常な状態です。本来は起こらなくてもいい反応が起こり、体にダメージを与えていることになります。

外から侵入してくる物質の中でも、体にとって必要なものや無害なものは、免疫が「許す」と判断し、攻撃対象としないのが望ましい形です。花粉も「許す」対象となるはずが、それらを敵と見なし、免疫が反応しアレルギーをもたらすのです。

アレルギーの発症は、免疫を高める「ヘルパーT細胞」のうち、ばい菌などと戦う「Th1」と、ダニや花粉に反応する「Th2」のバランスが崩れ、Th2に傾き過ぎている状態だと言われています。

これを予防する手だてとして効果が実証されているものは少ないといいますが、多くの専門家が「バランス」の大切さを強調しています。自律神経などの体のバランスを保つことが、免疫システムを正しい方向へと導き、花粉症などの反応を弱めることにつながる、ということです。

また、花粉症は生活環境の変化や体調にも大きく影響されます。就職や結婚、転居などで生活リズムが変わったり、風邪やインフルエンザにかかったりすると発症しやすくなります。これも、免疫のバランスが崩れるからです。

具体的な対策方法としては、深い呼吸によって自律神経系のバランスを整えるということが考えられます。それに役立つのが「中脘(ちゅうかん)呼吸」。みぞおちとおへその間にある中脘というツボに手をあてて意識しながら呼吸します。

一般に、呼吸法が自律神経のバランスの回復に効果的ということはよく知られています。呼吸に集中することにより副交感神経が優位になり、様々な要因により交感神経優位に傾いていた自律神経のバランスが回復していくのです。ただし、呼吸がとても浅い場合は、呼吸に集中しようとしても簡単ではなく、逆に気分が悪くなったりすることもあります。

中脘呼吸のポイントは、その名の通り「中脘」にあります。中脘のツボがほぐれることで胸の真ん中を通る任脈がほぐれ、呼吸が深くなります。中脘呼吸をする前に、中脘のツボのあたりを軽くたたいてほぐしておくと、さらに効果的です。

ぜんそく、花粉症、食物などのアレルギーを発症する子どもの割合は、この50年で10倍以上に増えています。若者からシニア層まで気軽に行える中脘呼吸で、健康力をアップさせましょう。

 

 

<中脘呼吸>
1.中脘のツボを軽く押しながら息を吐き出し、手をゆるめながら息を吸う

 

2.1~3分行った後、中脘から手を離し、楽に呼吸しながら全身を感じてみる