【地球アレコレ5】 ネパール2

 

ネパールといえばお約束、世界最高峰の山。
この山、ネパールと中国の国境にあって、ネパールではサガルマータ、中国(チベット)ではチョモランマ、そして国際的にはエベレスト、と呼ばれます。

 

上の写真は標高5540mのカラ・パタルという丘から。約3000mを見上げている感覚です。
手前の凄まじい岩肌と雪は、ヌプツェという山。エベレスト街道トレッキング地図

 

前回、酸素濃度のことをお伝えしましたが、この5500mという高度で酸素はちょうど半分。平地の50%ほどになり、エベレスト山頂では30%くらいしかありません。
大気が薄いと、空気中の霞(かすみ)も減るので、風のないときは遠くまでクリアに見えます。それで最初はしばしば、距離感を誤ってしまいます。
実際には遠くても、近いと感じてしまい、それで人間の目がとても高性能で微妙な大気の感覚を無意識に読み取っている、と気付かされたりします。

 

高地に住むシェルパ族たちは、大声を上げたり慌てたり、ということがほとんどありません。それも酸素濃度と関連しているようです。そんなことをすればすぐに酸欠になりますし、疲れてしまいます。無駄に呼吸を荒らげない、と乳児のころから体に染み付いているのでしょう。常に肺機能を多く活用して最大肺活量を活かすように、生まれた時から訓練されていると言えます。
それはある種の悟り感覚を伴うのか、シェルパ族には透徹したオーラを醸し出す人々が多くいます。魂の感覚、輪廻転生など隣のチベット系文化からの影響もあり、その深い生死観に惹かれる登山家も多いそうな。

高地同様に酸素の薄い(というか無い)海中でも、呼吸の深さと悟り感覚が関連しているようです。映画『グランブルー』で有名になった素潜りの達人、ジャック・マイヨールも、ヨガを訓練に取り入れ、意識と呼吸のコントロールを身につけていたそうです。

 

呼吸を深くしなければならない環境下であれば、命をつなぐためにも、感情を過剰にさせない知恵が身につく…、ということは、呼吸が人間的な成長のカギの一つ、と言えるかもしれません。逆にその環境下で自分をコントロールできなければ、パニックになったり、それで事故を招いたりするといえます。

 

 

水中の事故は、その例も多いと聞きます。
呼吸のトレーニングは、まだ一般的ではないのですが、だからこそ、大きなチェンジの可能性を秘めています。私たちが呼吸を深くリズミカルにすることは、ともすれば集団パニックに陥っている現代文明に、静かな波紋を投げかけることかもしれません。

エベレストの高度8850mでは無酸素での登頂が不可能だ、と“科学的に”言われていた時代もありました。しかし、正確な数字は不明ですが、今では10人以上のクライマーが無酸素登頂に成功しています。

人間の可能性は、本当に底知れません。その力を引き出す一つが呼吸です。

 

 

 

 

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