【地球アレコレ8】 マレーシア1

 

『一対一なら、日本人には負けない』
そんなセリフを、旅先で何度も聞きました。
そこで出会った他国からの旅行者、その土地の商売人、そのほとんどは男性でしたが、結構よく聞いたものです。20年前のことなので今は分かりませんけれど。
他によく聞いたことは、日本人かを確認された上で、
『ホンダ! (またはトヨタ!) とてもいい』
『カメラのファインダー見せて・・・ニコン、グッド!』

国籍を離れてまったく個として旅していると思っていた身としては“知らんがな”“いやもう負けてるから” “ハイハイ全くその通り” と思ったり、国で見ないでよ、などと少しばかりイライラしつつ、そこは身に染み付いたアルカイックスマイルだか意味不明ニヤニヤ(汗)だかで、やり過ごしつつ、
“結局、これぞ日本人だよなあ”・・・。
染み付いた文化があり、言語があり、習慣があって、その文化圏にいると気づかないことはとても多く、何人(ナニジン)でもない人間、というのは難しいようです。

 

文化的背景でいえば、このマレーシアはとてもユニークだといえます。
ユニークと言っては、その国で辛酸を舐めてきた人々に失礼かもしれませんが。
マレーシアの政治経済の中心であるマレー半島は、15世紀にポルトガルに占領され、次いでオランダに、更にイギリスへと統治が移りながら、その折々の都合で移民をあちこちから受け入れた結果、元々のマレー人に加え、インド系、中華系(華僑)、そしてボルネオ島側のたくさんの少数民族、と混在することになりました。

 

宗教でいうと、これまたキレイに分かれて、マレー系はイスラム、インド系はヒンズー、中華系は仏教(大乗)、となり、少し大きな街なら3つの生きた寺院がそれぞれあります。今も祈る場所として街なかで普通に機能している場所です。
さらに長らく欧州の支配下にあったことでキリスト教も僅かながら活動しており、まれには、教会で結婚式を挙げている中華系とヒンズー系のカップル、それを祝福するために集まったマレー系の友人たち、という状況も生まれます。

 

そんな状況を、へええ、と眺める薄汚いナリをした石鹸知らず、ではなくて世間知らずの旅人は、あちこちでとっ捕まり、冒頭のような言葉を言われることも・・・。
ただ談笑して終わり、という方がもちろん多いです。

 

さて、自分と違う宗教観・価値観がある隣人が、小さい頃から普通にいる、ということが身に沁みているマレーシアの人々は、基本的におおらか、というか余計な関心を持たないようです。“外国人だ”“言葉の通じないヤツがいるぞ”という緊張がおよそどんな田舎に行っても薄いのです。
アイツにちょっと興味を持った。話しかけた。一緒に水飲んだ。バイバイ。
それで、言葉の通じない人とのコミュニケーションは日常的にあるのか、
とても上手だと感じます。

 

写真は、メッカ巡礼を果たしたハッジと呼ばれるムスリムと、その友人で中華系の仏教徒。写真を撮られ慣れているわけではないでしょうが、とにかく自然体です。
カメラを無視するでもなく意識するでもなく、『ふーんそうかー、ほおー』。

 

自然体とは、映画『CHANGE』でも出てくる、ゼロ・ポイントなのかもしれません。
心(エネルギー)の無駄な使い方もなく、ただいつも中心でいる。
その中心が、宗教や民族ではなく、またマレーシアという国でもなく、
『まあ楽しく仲良くやろう、バナナ食いねえ』ということのような・・・。
対立・葛藤・暴力が元々好きな人間はいないですし、長期にわたる被支配と多民族が、
何がしかの心を成熟させた感じもします。

すべての人々の中心が【地球に生まれた地球人】となるまで、Change は
ずっと、続きます。

 

Comments are closed.